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近藤が襲撃された。
土方は全身が凍るような悪寒に襲われた。
徳川慶喜による大政奉還は思惑を外れた。
失敗である。
密かに手を結んだ薩摩と長州は宮廷工作をし、長州は再び京に出入りするようになる。
近藤はコレがたまらない。
長州が我が者顔して通りを歩いていくのだ。
朝命が出ているから、大政奉還により一大名になった幕府…徳川ではどうしようもない。
「もうよせ、近藤さん
大将のあんたがそんなにチョロチョロするもんじゃねぇ
新撰組はあくまで幕軍の一隊、政事はお偉い方に任せてどっしり構えててくれ」
「何を、歳
これを許しておけるか
何もかも、薩摩と長州の陰謀なのだ
王政復古もな」
「そんなことはわかってる
だからもう議論じゃない、戦さするしかないんだ
だからあんたがやるのは戦さに備えて隊をまとめることだ
いまこの時、戦さが始まるかも知れないんだ」
「そんなこと承知だ
だが戦さの前に策を整えてこそ勝つのだ」
十八日の朝、懲りずに城へ行く近藤を諌めたが聞く耳もなし。
二十人ばかりの隊士を連れ列を組んで出掛けて行った。
かつて伊藤が侮ったように、近藤は政治が好きなのである。
妙な天気だ…。
昼食を終えた土方は降ったり止んだりの天気に首を傾げた。
その時、微かに銃声を聞いた。
それから暫くしてである、近藤が右肩から血を流し駆け込んできた。
「どうした!?」
胸騒ぎがあってか、たまたま出くわした土方の全身を汗が冷やしていく。
近藤はしがみついていた馬から転げるように降りるとすぐ室内へ入っていく。
あまり多人数に見せるべきでもない。
砂利には鮮血が滴り肩からはなおも血が溢れている。
「医者を呼べ!血の跡を隠せ!
無闇に騒ぐな、長州や薩摩に知られるわけにもいかん
永倉と原田を呼べ!
局長の部屋だ!」
土方は指示を出しながら近藤の肩をとって部屋に入る。
そこで近藤は力尽きたように畳の上へ仰向けになった。
すぐに血が畳を濡らす。
「歳、お前の言う通り今日はやめておけばよかった
御陵衛士の残りだ、篠原の顔を見た
藤ノ森でやられた」
「誰か!」
土方は近藤の衣服を脱がせながら指示を続ける。
「焼酎とサラシを持ってこい!
永倉と原田に伝令!
藤ノ森へ急行、下手人は御陵衛士残党
隊士達も襲われてるだろう、討ち取ってこい!」
だが現場に着いたときには近藤の馬を引いていた下人と三人の隊士の遺体があるのみだった。
隊列の隊士達はバラバラに逃げ帰っており、襲撃の際、馬に鞭打ち近藤を逃した島田魁より実行犯は篠原、阿部、内海ら御陵衛士だったことが判明した。
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