第11章

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「来た来た」 時を遡る。 近藤が隊列を従え伏見街道を墨染まで来た。 その脇には空き家があり、格子の隙間からじっと見つめる者がいる。 手には鉄砲。 新人が多い隊列のためか新撰組は誰も気付かない。 いるのは篠原、加納、富山、阿部らなど御陵衛士残党。 来る日も偵知していたが今日城に向かったのが新人ばかりとみて、決行を決めた。 今は薩摩藩に匿われており、鉄砲も借り受けたものだ。二丁ある。 「二十人ばかりいるがどの顔も覚えがない 新参の役立たずばかりだ 鉄砲を撃ち我々が斬りこめば蜘蛛の子を散らすようなものだ」 恐るる足らず、である。 彼等もまた新撰組において百戦錬磨である。 近藤が近づいて来た。 「来た来た」 と言うなり、篠原は撃った。 隣にいた阿部も釣られて撃った。 轟音がなり馬上の近藤が踊った。 肩からは血飛沫が上がる。 「いけ」 誰も彼も刀を抜き襲いかかる。 近藤が馬にしがみついた。 そこを隣にいた島田が鞭を入れ走らせる。 篠原が一瞬迫ったが島田が防ぐ。 そのまま島田もすぐに離脱した。 何人か隊士など斬ったが、流石に逃げるのは早くすでに人はいない。 のちにこの結果を聞いた薩摩藩士の何某は叱り飛ばした。 「何故に先に馬を撃ち殺さなかった!」
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