前半

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「おめでとう、明子! いいなあ~。免許!!」  昼間の宣言通り、ここ【Twilight】で運転免許取得の乾杯をした。  大学は夏休みに入ったし、私もバイトやなんかで忙しくて、光と飲んだのは久しぶりだった。  私たちはお互いの近況を伝えあって、大いに盛り上がっていた。が、しかし……。 「光。久しぶりだね。元気だった?」  どこからともなく、甘いバリトンが聞こえてきた。  この声は!?  嫌な感じしかしないが、振り向き見上げると、いつの間に湧いて出たの!?  音無さんがにっこり微笑んで、すぐ後ろに立っていた。 「あら音無さん? 今日は金曜日じゃありませんよ?」  毒舌注意報の、流し目を送る。と……。 「金曜日じゃなくても来ていいんだよ。イチャつかなきゃね!」  にっこり笑顔で、流し目を返してきた。  むむむ。相変わらず、曲者笑顔炸裂だわ。  よく見れば、音無さんの隣には、いつかのカラーの男性までいる!  けど、今はカラーの髪は真っ黒に染められていて、ゆるい七三分け。  チャラいイメージはどこにもなくて、硬質な鋭さばかりが目につく。  それでいて隣にいる姿は、自然そのもの。  もしかして、この2人……? また修羅場か!?  私が脳内でぐるぐる修羅場を妄想している間に、光たちは自己紹介をしていたようだ。 「明子、ほら、挨拶は?」  お母さんみたいに挨拶を促されて、不本意に目線を下げる。 「どうも、中山明子です。音無さんの恋人の相原マサルの知り合いです。っていうか友達かな……」  とまあ、何だか牽制的な挨拶になってしまった。  元カラーさんこと、小西清次郎さんは(この人、めちゃ渋い名前だった)くくくっと、含み笑いを漏らした。 「牽制しなくても大丈夫だよ。  響とはただの、金曜日以外にここに来る関係だから。ね?響」  色気たっぷりの声色に、モデルみたいなウィンクを乗せて小首をかしげている。 「お前なぁ……、中山さんが誤解するだろう……俺、もう修羅場はゴメンだぞ」  音無さんはちょっと嫌な顔で小西さんを見つつ、私に向かって色気のある流し目を飛ばしてくる。  ひえぇー! なんなの?このコンビは! 初めて会った時から関わっちゃいけない!と、私の観察眼が警告を鳴らした通り、やっぱりこいつらは危ない!  なんていうの、うっかり油断して腹でも見せた瞬間、内臓抉られそう……。  光って、よく音無さんと付き合ってたよな~。  光って実は最強なのかしら!?  音無、小西コンビと楽しそうに会話を弾ませている光を、改めて尊敬の眼差しで見て、ついでに拝みたくなってきた!
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