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「90、91・・・98,99、100。ぷはぁっ」
日課である腹筋百回を終えた真央が大きく息を吐いてラグに倒れこんだ。
「大丈夫? ってか何で毎日腹筋百回なのか分かんないんだけど」
足元から声がするのは妹のサチだ。就寝前に気が向いたときだけではあるが足を押さえたり回数を数えたりして真央のトレーニングを手伝ってくれる。
「いやぁ、ほら、もうすぐ県大会だしさ。サチ見に来る?」
「やぁよ。一日お日様の下にいたら焼けちゃうもん。この間お母さんに買ってもらったワンピが似合わなくなっちゃう」
「はは・・そっか」
乱れた呼吸のまま真央は笑った。
「それよかお姉ちゃん───」
呼びかけと同時にサチはパジャマ代わりの真央のTシャツを胸の下まで捲った。
「ちょ・・・何する」
「いやーこの腹筋・・・スゴイわ。中学生男子に完全に勝ってるね」
臍の辺りをすべすべした掌で撫でられて、くすぐったさに真央は身を捩った。
「こら、やめなさい」
真央がちょっぴり怒りを込めて声を上げるとサチはペロッと舌を出してシャツから手を離した。
「腕も絶対お兄ちゃんより太いよね。こんなマッチョなお姉ちゃんと付き合ってくれそうな男の人って───やっぱり体育会系?」
二才上の長兄と比べられて真央はいささかムッとした。まだ妹には上村の事を話していない。
練習の後会いに来てくれてから潟で姿を見ていない。
今度はいつ会えるんだろう・・・ぼんやりと上村の顔を思い浮かべていると間近に妹の顔が迫っていた。
「・・・お姉ちゃん、ひょっとして彼氏できた?」
「・・・ぶっ」
正に相手を思い出していた時だっただけに真央は妹の目を正視する事ができなかった。
「さっきのお姉ちゃんの目がさ、うるっとしててちょっと可愛かったから」
「え?」
3才年下の妹に可愛いといわれて真央は瞬間喜んだ。
「まさかね・・」
勝手に納得したサチは真央から身体を離して二段ベッドの梯子を上った。
「彼氏ができたら寝る前に腹筋百回なんかしないよね。鏡見たり髪の毛のお手入れするのが女子でしょ普通」
「・・・そういうもの?」
「でしょ。スマホも見ないし・・・てか、あれよね。夜リビングに置いてくるのお姉ちゃんだけだよ」
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