第二章

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ある新月の夜のことである。 ある集落で、ある女が双子を産んだ。 赤子の泣き声が、集落に響き渡る。 女の家の周りには、集落中の男が集まっていた。 産まれるのを待ち兼ねていたのだ。 やがて、三人の老いた男が家の中へ入っていく。 この集落の長老達である。 集落は、重苦しい雰囲気に包まれていた。 皆、一様に険しい表情を浮かべている。 けして、祝福するために集まったわけではなかった。 家の中では、女がぐっしょり汗を掻き、 疲れ切った状態で横たわっていた。 女は、入ってきた長老達に悲しい眼を向けた。 「我々も辛いのだよ。わかってくれ」 長老の一人が女に言った。 「仕方がないのだ。 その子は、禍をもたらす。 生かしておくわけにはいかない」 もう一人の長老はそう言うと、 二番目に産まれた女の赤子を取り上げた。
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