第1章

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翌日、池を見ると石はなかった。 祖母が片付けたのかと思った。 それから十年たち二十年たち、祖母も高齢となった。 毎月のYへのお参りは続いていた。 そろそろつらいので、生きているうちに嫁を貰ってくれとせっつかれていた。 そうはいっても、なかなか縁に恵まれずに三十歳も目前だった。 石を持ち帰るために嫁に来てもらう訳じゃないんだから、と何度宥めたことか。 祖母は段々と体の自由が利かなくなり比例して頑なになっていった。 嫁が替わってくれないと大変なことになる 時には夜中にそう言って来るようになった。そんな夜は寝付けないので温めたワインを薄めて祖母に渡した。 池の水音に異様なほど怯えたり。 「魚でも跳ねたんだろう」 「あんたは忘れたのかい ここには魚なんかいるもんか」
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