第1章

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あの夜に何があったのだろう。 祖母が母を殺めたのかもしれない。 幼いとはいえ、記憶がまだらで思い出せない。 というよりは蓋をしているように。 葬式でも棺の母の顔を見ていない。 祖母に抱きしめられていた。 その手は母をもしかしたら。 祖母が車椅子で動けるようになりYへ行きたいと行ったが、のらりくらりとかわしていた。 祖母がそれほど大事にしている事を、自分の意思で遮っている事が嬉しかった。 表向きは祖母を案じる孫を演じて。 消灯に合わせて病室を出ようとした背中に、声がかけられた。 「あんた、アタシを憎んでいるね」 振り返らずに出た。
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