第1章

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最後に見たあなたは見たこともないような笑顔でしたね。 泳げないからと渋る私を浮き輪に乗せて、沖まで連れていくあなた。 「俺がいるから大丈夫だ」なんて。ふふ、実は惚れ直していたんですよ、あの時。 浮き輪に穴が空いていたことなど、故意か事故かなんて問い質すつもりはありません。 大丈夫だと言ったあなたが、助けを求める私をただただ見つめていたことなど、些細なことです。 ただ、ひとつだけ確認したくて筆をとった次第です。 私の初盆には、手を合わせてくれたのですよね? 葬儀にも姿を見せなかった私の恋人は、事故で恋人を亡くしたあなたは、痛ましい事故に涙を流してくれていたのですよね? 内縁の夫となったあなたに生命保険の受取人を変更したことと事故とは関係がないんですよね?
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