アメンボ

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……これは僕が小学生だった頃の話。 雨上がりのその日、 僕は友達とふざけながら家に帰っていた。 道の傍らの池には大量のアメンボ。 不意に友達が足を滑らせ池に落ちた。 ドボン。 それまで静かに水面を滑っていたアメンボが 途端に活気付く。 みるみる間に友達の体には 無数のアメンボが纏わり付いた。 「痛い!やめろ!痛い、痛い……」   バシャバシャと音を立て友達は暴れるが、 暴れれば暴れるほどアメンボの数は増えていく。 いままで見たこともない光景に、 僕はただ腰を抜かし 呆然と見ていることしかできなかった。   我にかえるとあたりはしんと静まり返っている。 ピクリとも動かず池に浮いている友達の周囲を、 何事もなかったかのように アメンボが静かに滑っていた。 【終】
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