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「歌子さんっ!」
前方遥か遠くを走る彼女が、立ち止まった、ように見えた。
そのまま走り続けて何とか彼女に追いつくと、
息を整えてから、蚊の泣くように呟いた。
「ごめんね、歌子さん…さっきは、驚かせてしまって……
嫌な思い、を、させて……その、僕は……」
どうしよう。
こんな時、みんなは、他の人達は何て声をかけて、
どんな言葉を、どんな表情で伝えるのだろう?
うつむいて何を言おうか悩んでいると、
僕の前髪のすぐ下に、小さな黒い靴の先が見えた。
とほぼ同時に、メモが差し出される。
”おどろかせて、ごめんね”
僕は顔を上げた。彼女は笑ってメモを綴る。
”私はいつも、図書室にいます”
「うん……」
そう返事して黙っていると、彼女はそのまま帰って行った。
こうしてようやく、僕達は誰よりも仲のいい友達になった。
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