#02 * 雪将

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ーーーーー 「歌子さんっ!」 前方遥か遠くを走る彼女が、立ち止まった、ように見えた。 そのまま走り続けて何とか彼女に追いつくと、 息を整えてから、蚊の泣くように呟いた。 「ごめんね、歌子さん…さっきは、驚かせてしまって……  嫌な思い、を、させて……その、僕は……」 どうしよう。 こんな時、みんなは、他の人達は何て声をかけて、 どんな言葉を、どんな表情で伝えるのだろう? うつむいて何を言おうか悩んでいると、 僕の前髪のすぐ下に、小さな黒い靴の先が見えた。 とほぼ同時に、メモが差し出される。 ”おどろかせて、ごめんね” 僕は顔を上げた。彼女は笑ってメモを綴る。 ”私はいつも、図書室にいます” 「うん……」 そう返事して黙っていると、彼女はそのまま帰って行った。 こうしてようやく、僕達は誰よりも仲のいい友達になった。 ーーーーー
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