#02 * 雪将

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トイレ事件から1ヶ月。 タイミングを伺い続けていた僕は、 ついに『あの話』を切り出した。 「あの、さ……聞きにくいんだけど……  どうして……声出さないの?」 <出さないから> 彼女は困ったようにそう答えた。 歌子さんは、 通常の人間の何十倍も優れた聴力を持っていて、 それが成長するにつれ、自分の声すら煩くて仕方なくなった。 彼女の声はどんどん小さくなって、 終いには話すこと自体を、諦めてしまったらしいのだ。
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