1人が本棚に入れています
本棚に追加
トイレ事件から1ヶ月。
タイミングを伺い続けていた僕は、
ついに『あの話』を切り出した。
「あの、さ……聞きにくいんだけど……
どうして……声出さないの?」
<出さないから>
彼女は困ったようにそう答えた。
歌子さんは、
通常の人間の何十倍も優れた聴力を持っていて、
それが成長するにつれ、自分の声すら煩くて仕方なくなった。
彼女の声はどんどん小さくなって、
終いには話すこと自体を、諦めてしまったらしいのだ。
最初のコメントを投稿しよう!