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教室にいると、チョークが黒板を叩く音、
ペンが紙をなぞる音、誰かのないしょ話、その他さまざまな音が、
一致団結して彼女を襲う。
だから彼女は、学園で一番静かな場所を選んだ。
つまりあのトイレ事件で、
歌子さんが硬直および逃走した理由は、
僕が蹴り飛ばして転がったバケツの音が大きすぎて、
酷い耳鳴りと、頭痛を、僕が突然与えてしまったことにあった。
<ふたりだけの ひみつのばしょね>
歌子さんはそう言った。
そしてその甘美な響きに、僕は魅入られたのかもしれない。
改めて説明するまでもなく、僕は歌子さんが好きだ。
たとえ彼女の存在が儚く、とても壊れやすいものであっても。
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