羊飼いと狼の怪物

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 村外れの小さな牧場に、ケンという少年が住んでいた。  ケンはもともと両親と姉との4人暮らしであったが、彼の5歳の誕生日の夜、家に恐ろしい狼のような怪物が現れて、両親と姉は彼の目の前で喰い殺されてしまった。  3人を貪り終えてから、怪物はケンに言った。  「お前はまだ小さくて食べ応えがなさそうだ。……10年後に食べに来るとしよう」  孤独の身となったケンは、祖父が1人で営む牧場に引き取られた。  祖父は元軍人で、怪物を恐れるケンに戦い方や恐怖に打ち克つ勇気を教えてくれたが、1年前に重病を患って以来臥せっていた。  ケンは羊飼いとして働きながら祖父の看病を続け、そして今日15歳の誕生日を迎えた。  その日の夕暮れ。  ケンは丘の上に異形の狼の影を見た。   ――――来た。  影はケンを指差し、そして村の方を指し示した。  それは「お前の次には村の者も喰らってやる」という怪物の意思表示であった。  ケンは決意した。   ――――護らねば。  村人や病床の祖父には怪物に抗う術などない。  己はこの日の為に鍛錬を重ね、準備をしてきた。  しかし――もし自分が怪物に負けるようなことがあれば、村人は皆殺しにされるだろう。  ケンは村人達に、怪物の危機が迫っていることを伝えに村へ下りた。 
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