羊飼いと狼の怪物

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 「なに? 狼がやって来るだと?」   ――――違う。狼のような“怪物”だ。  ケンの知らせを聞いた村の男達が集まり、木の棒や鍬を持ち出してきた。  松明を掲げ、「狼狩りだ!」と鬨の声を上げる。   ――――やめろ。敵う相手じゃない。  ケンの声は届かない。  已む無くケンは奔り出し、男達よりも先に丘へ登った。  丘の上では怪物が嬉々として舌舐めずりをして待ち構えていた。  ケンはナイフで腕に傷を付け、滴る血の匂いで怪物を森へと誘き出す。  森には罠が仕掛けてある。  ケンは様々な罠を駆使して、この夜はなんとか怪物を追い払った。  怪物は逃げ去り際に言った。  「覚えていろ。明日の夜には必ず喰らってやる」  次の日の夕暮れ。  ケンは再び村人達に、怪物から逃げるように伝えたが、彼らは聴かなかった。  気勢甚だしく、農用フォークや鎌を手に取った。   ――――彼らを死なせるわけにはいかない。  ケンは傷付いた脚を引き摺りながらも、誰より速く怪物の許へ。  村へと向かう怪物を見つけると、大きな声で揶揄して見せた。   ――――子供に負ける怪物め。羊は余程手強いぞ。  怒った怪物は大きな爪を振り被りケンに襲い掛かる。  ケンは腕の肉を裂かれながらも必死に逃げる。  谷川の吊り橋を渡ると、怪物が追い駆けてきた。  怪物が橋の真ん中まで来たときに、ケンはナイフで吊り橋の縄を切った。  怪物は川に落ちて流されていった。    ――――怪物(あいつ)がこれで死ぬはずない。
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