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一気に、皆人の顔から血の気がひいていく。
これはヤバい。
絶体絶命にヤバい。
けれど邪険に美百合の体を突き飛ばそうものなら、
その瞬間、自分は撃ち殺されるのだろう。
美百合の体が都合良く盾になっている間に、皆人は慌てて両手をバンザイし、必死こいて無実を訴えた。
「違う、俺は違うからね。くっ付いてるのはみゆっちだからね」
しかし美百合はますます強い力で、皆人の腹にしがみ付いてくる。
背が低いから仕方がない。
仕方がないが、見下ろせば、隙間もないほどくっついた皆人の腹に、美百合の爆乳が押しつけられて、たっぷりと盛り上がっている。
……いや、これはなかなか。
「皆人――。いますぐ美百合から離れろ」
地獄の底から響いてくるような龍一の声がなかったら、ちょっと反応してしまったかもしれない。
ところが、
「龍一は黙ってて!」
罪つくりな美百合は、皆人にしがみついたまま、龍一を振り返る。
加えて、
「お願い皆人くん。私をここから連れ出して」
なんと潤んだ瞳で、逃避行のおねだりだ。
「みーなーとー」
龍一の声は、もう顔を見ることも出来ないくらいに恐ろしい。
「み、みゆっち。とにかく落ち着こうか、ね」
とにかく何より、皆人は自分の命が大事だ。
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