10年間の距離

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一気に、皆人の顔から血の気がひいていく。 これはヤバい。 絶体絶命にヤバい。 けれど邪険に美百合の体を突き飛ばそうものなら、 その瞬間、自分は撃ち殺されるのだろう。 美百合の体が都合良く盾になっている間に、皆人は慌てて両手をバンザイし、必死こいて無実を訴えた。 「違う、俺は違うからね。くっ付いてるのはみゆっちだからね」 しかし美百合はますます強い力で、皆人の腹にしがみ付いてくる。 背が低いから仕方がない。 仕方がないが、見下ろせば、隙間もないほどくっついた皆人の腹に、美百合の爆乳が押しつけられて、たっぷりと盛り上がっている。 ……いや、これはなかなか。 「皆人――。いますぐ美百合から離れろ」 地獄の底から響いてくるような龍一の声がなかったら、ちょっと反応してしまったかもしれない。 ところが、 「龍一は黙ってて!」 罪つくりな美百合は、皆人にしがみついたまま、龍一を振り返る。 加えて、 「お願い皆人くん。私をここから連れ出して」 なんと潤んだ瞳で、逃避行のおねだりだ。 「みーなーとー」 龍一の声は、もう顔を見ることも出来ないくらいに恐ろしい。 「み、みゆっち。とにかく落ち着こうか、ね」 とにかく何より、皆人は自分の命が大事だ。
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