10年間の距離

3/20
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
皆人は半泣きになり、いたずら電話も真っ青の勢いでリダイヤルする。 しかし龍一の電話はそれから繋がることはなく、むなしくコール音だけが鳴り響く。 おそらく着信拒否にされたのだろう。 この電話ではらちが明かないと、乃亜や理沙の携帯を借りて何度もかけ直した。 最後に泣きついた谷口の携帯で、やっと龍一は電話をとってくれた。 「俺、減棒なんてヤダよ。マンションのローン、まだ残ってんだよ」 電話を借りた理沙からは、 「ついに兄からも嫌われたか。龍もいい厄介払いしたわね」 と嫌味を言われ、谷口からは、 「ゼッテーそれ、龍に遊ばれてるだけだって。いいねー愛されてるって」 さんざからかわれ、もう何もかもがうんざりだ。 乃亜だけが、 『皆人くん。イイコイイコ』 と頭を撫でてくれたので、かろうじてキレないで済んでいる。 待っててね乃亜ちゃん。 このミッションを成功させて、減棒だけにはならないようにするからね! 皆人は熱く誓うが、えらく目標の低い到達点ではある。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!