38人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
部屋はバーカウンターが備え付けられた立派なリビングルーム。
奥にまだドアが続いているところを見ると、ベッドルームは別なのだろう。
この部屋で、龍一はもう何日も過ごしているそうだ。
『ここ一泊いくらだよ』
思わず舌打ちしながら、皆人は辺りを見回した。
部屋の中には、花が溢れんばかりに生けられている。
それは皆人が配達するまでもなく、見舞いにしても尋常な量ではない。
リビング中が花まみれだ。
「なに兄貴、ここで花屋でも開業する気?」
皆人の問いに、龍一は、
「美百合が少し花に脅えるんでな。今、リハビリ中なんだ」
と、意味不明な言い訳をした。
すると突然、龍一がバスローブを脱いだ。
勢いよく脱がれたその下から現れたのは、龍一の逞しい裸身。
肩や腕に巻かれた包帯が白く痛々しいが、それでも均整の取れた鍛え上げられた肉体だ。
病身の透けるような顔色とのギャップに、思わず心臓が跳ね上がる。
「な、なんでいきなり脱ぐんだよ」
龍一は怪訝そうに眉をひそめる。
「お前が何て格好だと言うから着替えるんだが、文句でもあるのか?」
そう言って、脱いだバスローブを無造作にソファーに引っ掛け、カジュアルなチノパンに長い足を通す。
シャツを目で探しながら、上半身裸のままで、皆人に近づいてきた。
皆人には、かわいい『乃亜』という奥さんがいる。
奥さんがいるが、一瞬、血迷いそうになった。
俺は断じて、女の子が好きだかんね!
心の中で、懸命に叫んでみる。
最初のコメントを投稿しよう!