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龍一は、皆人のすぐ脇のソファーの背もたれに目当てのシャツを見つけ、
すくうように拾うと、端をちょっと噛んで、左手を通して羽織った。
右腕がまだ不自由だからだろうが、その仕草がたまらなく男っぽい。
「ご苦労だった。もう帰っていいぞ」
そして、大枚をはたいて花を買ってきた皆人に寄こすのは、とてつもなく上から目線の一言だけ。
つい、
「あんた、他に言うことあるんじゃね?」
なけなしの意地で文句を言ってみたら、
「なんだ? キスでもして欲しいのか?」
返ってきたのは、龍一の妖艶な笑みと共に笑えない冗談。
思わず、
――倒れそうになった。
「……確認したくもないが、冗談だぞ」
龍一が不快そうに言うのが、なおさら腹がたつ。
「兄貴の冗談、相変わらず致命的に面白くないんだよ。
それよりみゆっちは? 寝てんの?」
強引に話題を変えた。
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