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―――ぴぴぴっ
朝七時を伝える携帯の目覚まし。
叩くように携帯をとり、アラームを解除した。
(全く、寝れなかった)
黒い隈のある自分の顔を鏡で見つめ、大きく、深くため息をついた。
(散々だ・・・)
大学、休みたい。
でも・・・このまま寝てても、きっと眠れないだろう。ならば、大学にいっていた方がまだ気は紛れるかもしれない。
(しかた、ない・・・)
渋々、大学への準備をする。
―――ピコッ
そこで携帯から聞きなれぬ音がした。
親なら電話してくる。
友人には連絡先を教えてない。
セックス関係の相手は言わずもがな・・・ありえない。
(じゃあ、誰だ)
誰だ、といいつつ、わかっていた。
ただ一人だけ、俺は連絡先を教えてる奴がいたのだ。
(でも、まさか、そんな)
携帯を、震える手で掴み、持ち上げる。
―――LINE通知 1件
やっぱり。でも、どうして。
そんな混乱する頭を、俺は無理やり気にしないようにした。携帯の電源を切り、上着のポケットに入れる。
「であるからしてー」
大学の退屈な講義が、いつに増して頭に入ってこなかった。その原因はわかりきってる。
(熊原と、朝のLINE)
どうしてこうも重なるのだ。俺のトラウマは。
「生理かよーミノリ」
「・・・」
隣の席に座る、合コン好き友人が頬杖をつきながら話しかけてくる。講義は質疑応答しながらの進行のためそれなりに賑やかだった。だからこれぐらいの会話なら全然ばれない。
「誰が生理だ」
「だってお前ずっと貧乏ゆすりしてるし、ため息百回はしてるし」
「・・・」
「恋か?恋なのか??」
「・・・」
「そうか、失恋か!!」
俺が答えないため、どんどんエスカレートしていく。もう訂正するのも面倒で。
「そうだよ、失恋だ」
「なっ」
「一生で一度の失恋だった」
「ミノリ・・・」
お前って奴は!と涙ぐんだ友人に背中を叩かれた。
「お前、秘密主義だし、わかんないとこ多いけど・・・色々、あったんだなっぐすっ」
「・・・」
その涙を白けた瞳で見てから、黄昏れるように窓の外を眺めた。
(色々あった・・・か)
確かに、色々あった。
そしてこうなった。
(哀れで、みじめな人間に、なった)
自らの行動を振り返り、自嘲するように笑う。
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