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「じゃ、こっちの道を歩いて、次の十字路を右な。そうすれば大通りに出るから、多分そこの道はあんたもわかると思う」
携帯にいれてあるナビ機能を使って、ショップへの道を検索する。その道順を簡単に指示すると、男は驚いたような顔をして猫と見つめ合った。
なんだよ、と睨みつけると男は猫を片手で抱えなおし、
―――スッ
俺に腕を差し出してくる。
「くまばらしゅうと」
「へ?」
ぽかんと口を開けてその手を見つめていると、男は再度同じセリフを言う。
「熊原 秀人だ」
「あ、うん」
握手すればいいのか?
戸惑っていると男は真剣な瞳で俺をじっと見つめてくる。
(な、なに、俺の顔になにかついてんのか・・・?)
男はしばらく見つめた後、はっきりと言った。
「お前が好きだ、一目惚れだ」
絶句したのはいうまでもないだろう。
ここまで真っ直ぐな、ど直球な告白は初めてだった。
(え・・・は?俺が・・・好きだって?)
こいつ見るからにノンケっぽいのに、何言ってんだ。
イタズラか?
(そういうの、言うタイプには見えないけど・・・)
でも、俺を好きになる方がもっとありえない。それならまだ、おかしな冗談を言ってると思う方が信じられる。
「じ、冗談だろ、やめてくれ、気持ち悪い」
嫌悪を込めて、はっきりと拒絶する。男はその言葉を聞いても一歩も引かなかった。
「人が人を好きになる事は、気持ち悪いことじゃない」
「!!」
呼吸さえ忘れて、男の顔を見つめた。
(人が人を好きになる事は気持ち悪くない・・・?)
嫌な記憶が蘇りかけて頭を必死にふり掻き消した。俺は震える体を抑えこみ、悲鳴のような叫びをあげる。
「馬鹿なことを言うなっ!!」
男の腕を払い落とし、路地を後ずさった。
「男が男を好きになるとか、ありえないだろ!!頭おかしいんじゃないのか!!!」
「お前の名前は?」
全く引かない。
逆に近寄ってくるこの男に恐怖さえ覚えた。
こんな男と関わってはいけない。
急いで立ち去らなければと思った時だった。
「ミノリー!」
後方から、聞いたことのある声がする。はっとして振り向けば、大学の友人だった。後ろに男をひきつれてこっちに近寄ってくる。
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