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「こんな所でどうしたんだよミノリ。あ、俺は合コンの店への近道だから、よくここ使うんだけどさーってあれ、この人は?」
男に視線を移し、怪訝な顔をする。
「なにこの、TVとかにいても違和感なさそうなイケメン」
「・・・知らない、道を聞かれたんだ」
「あ、あー」
猫を抱える男を見つめ、面白がるように頷いた。
「なあんだ、てっきりシュラバかと思った」
「はあ?」
「女の取り合いとかしてんのかなーってさ、思うじゃん、イケメン二人が並んでたらさ」
ある意味別種の修羅場だったけども。友人の乱入のせいで一気に場が冷めてしまった。
「ミノリ」
しかも、名前を知られてしまった。ああもう、最悪だ。
「ミノリ」
再度男が俺の名前を呼ぶ。
「ああもう、なに!?早く店もどれよ!」
「ミノリ、すっ」
好きだ。
そう言いかけた男の唇を、手で塞ぐ。
“黙れ!!”
目でそう訴えると、男は肩をすくめ、息を吐いた。隣に立つ友人が興味津々という顔で俺たちを見てくる。
「~~っ、ちょっと来い!」
男の腕を引き、友人から逃げるように路地を去った。
路地を真っ直ぐ行き、十字路を右に進む。すると、大通りにでた。振り返るが、そこに友人の姿はない。
「ふう・・・」
「ミノリ、店にこい」
「はあ?」
行くわけないだろ。よくも知らない、というか知りたくもないお前の店なんかに。
俺の顔から拒絶を読み取った男は、俺の腕に猫を押し付けてきた。
「え?!」
「シャークという」
「あ、そう」
「俺の店で一番のイケメン猫だ」
「・・・」
イケメン猫を抱いて、俺に何をしろと。
癒されるのか、癒されればいいのか。
すぐに返却しようとしたが、猫に罪はない。なるべく乱暴にしないように男に近寄った。
「ほら、俺、動物飼ったことないから、扱い方わかんないんだって」
そういって猫を差し出すが、男はそれを無視して大通りの道を進んでいってしまう。
「あ!おいこら!」
猫が閉じていた瞼をゆっくりとあげて俺の顔を見てくる。
「あ、悪い、うるさかったか」
音量を落とし謝ると、また猫は瞼を閉じた。
(って!そうじゃないだろう!)
このまま猫をおろすのは、だめだよな。
(くそっもう、なるようになれ!)
すでに遠くなりつつある男の背中を見つめ、走り出した。
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