【2】一番はイヤです。

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「亀のフランケン、インコのシュピーゲル、柴犬のウルフ」 ペットショップの動物たちの名前を唱えていく男の背中を、俺はげんなりとした顔で見つめ続けた。 (破壊的すぎるだろセンス・・・) 名前負けもいいところのそんな名前。ものの見事に動物達は男の呼びかけを無視していた。 (そりゃ嫌だわな) 同情しつつ店の入り口で立ち尽くしていると、腕の中の猫が暴れ始める。店の扉が閉まっているのを確認してから、猫をおろしてやった。 「もう逃げるなよ」 そう言うが答えは返ってこない。 「よし、もういいよな」 店を去ろうと、身を翻す。 ―――がしっ 身を捩った姿勢のまま、掴まれた腕を見下ろした。もちろん掴んできてるのは、男の手だった。すかさず男を睨みつける。 「おい」 「ミノリ」 「はなせ」 「さっきはありがとう、助かった」 「!」 突然の礼に面食らう。 (な、なんだよ、急に!) 返答に困っていると、男がこっちだと腕を引いてくる。 「奥に、見せたいものがある」 「あ、おい!!俺はー」 「いいから」 問答無用で引っ張られていく。 (な、何があるんだ・・・?奥って、まさか) よからぬ事を考えてしまい、俺はすぐに頭を振った。 (何を考えてるんだ!!ノンケ相手に、しかも・・・俺を好きだとかいう男なんか・・・ぜったい願い下げだ!) もしも押し倒されたら、股間を蹴って逃げよう。そう決心して身構えた。 ―――がちゃっ 店の奥の部屋に入る。するとそこには 「!!!」 ―――みゃぁ・・・みゃあ・・・ 小さな、本当に小さな子猫がいた。手のひらよりも小さい、多分生まれてすぐの子猫。まだ目も開いてないその子猫は不安げに鳴いている。 「こいつ・・・」 男は子猫に近寄り、下にひいてあった毛布ごと抱き上げた。そして、部屋の隅にあった流しに向かう。 「それ、とってくれ」 「え」 「哺乳器」 「あ、うん」 言われて、俺の横の棚にあった哺乳器らしきものを男に渡す。 「って何大人しく言うこと聞いちゃってんだ俺!」 「うるさい、猫が怯える」 「う、ごめんなさい」
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