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「亀のフランケン、インコのシュピーゲル、柴犬のウルフ」
ペットショップの動物たちの名前を唱えていく男の背中を、俺はげんなりとした顔で見つめ続けた。
(破壊的すぎるだろセンス・・・)
名前負けもいいところのそんな名前。ものの見事に動物達は男の呼びかけを無視していた。
(そりゃ嫌だわな)
同情しつつ店の入り口で立ち尽くしていると、腕の中の猫が暴れ始める。店の扉が閉まっているのを確認してから、猫をおろしてやった。
「もう逃げるなよ」
そう言うが答えは返ってこない。
「よし、もういいよな」
店を去ろうと、身を翻す。
―――がしっ
身を捩った姿勢のまま、掴まれた腕を見下ろした。もちろん掴んできてるのは、男の手だった。すかさず男を睨みつける。
「おい」
「ミノリ」
「はなせ」
「さっきはありがとう、助かった」
「!」
突然の礼に面食らう。
(な、なんだよ、急に!)
返答に困っていると、男がこっちだと腕を引いてくる。
「奥に、見せたいものがある」
「あ、おい!!俺はー」
「いいから」
問答無用で引っ張られていく。
(な、何があるんだ・・・?奥って、まさか)
よからぬ事を考えてしまい、俺はすぐに頭を振った。
(何を考えてるんだ!!ノンケ相手に、しかも・・・俺を好きだとかいう男なんか・・・ぜったい願い下げだ!)
もしも押し倒されたら、股間を蹴って逃げよう。そう決心して身構えた。
―――がちゃっ
店の奥の部屋に入る。するとそこには
「!!!」
―――みゃぁ・・・みゃあ・・・
小さな、本当に小さな子猫がいた。手のひらよりも小さい、多分生まれてすぐの子猫。まだ目も開いてないその子猫は不安げに鳴いている。
「こいつ・・・」
男は子猫に近寄り、下にひいてあった毛布ごと抱き上げた。そして、部屋の隅にあった流しに向かう。
「それ、とってくれ」
「え」
「哺乳器」
「あ、うん」
言われて、俺の横の棚にあった哺乳器らしきものを男に渡す。
「って何大人しく言うこと聞いちゃってんだ俺!」
「うるさい、猫が怯える」
「う、ごめんなさい」
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