【2】一番はイヤです。

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子猫が不安げに鳴いたと思ったら、男の指に吸い付いた。 (こいつ、ミルクが欲しいのか?) 俺が見守っている間にも、男は手馴れた手つきで哺乳器に温めたミルクをいれていく。そして子猫の口に哺乳器をあてた。 「あ!」 ちゅうちゅうと子猫が哺乳器に吸い付く。口の端から大量に零しながらも、美味しそうにミルクを飲み干していった。 「がっつくな、誰もとらない」 飲みやすいよう適度に角度を調整しながら、男は子猫に優しく囁いた。 「そう、いい子だ」 こんな風に囁かれてみたい、そう思ってしまう程、優しい声音だった。 「・・・」 「なんだ、ミノリも飲みたいのか」 「え?!はあ??」 俺の顔を不思議そうな顔で見てくる。 「物欲しそうに見てただろう」 「はああい??」 何を馬鹿なことを、と裏返る声で叫んだ。 「じゃあ、子猫にあげてみるか?」 「え・・・?」 「ミルク」 「お、俺が?いや、無理だから、俺そういうのやったことないし!」 「俺がやったようにすればいい」 男が哺乳器を差し出してくる。それを受け取るか迷っているうちに、ぐいっと無理やり押し付けられた。 「ほら」 俺の手の上から男の手が重なる。そしてゆっくりとした仕草で、哺乳器を子猫の口もとまで持っていった。 「こうすればいい・・・違う、押し込むんじゃない、噛み付いてきたらこうやって角度を変えるようにして・・・」 耳元で囁くように俺に指示していく。器用に俺と子猫を抱きながら、男は低く落ち着いた声で囁き続けた。 (は、反則だろ・・・こんなの・・・!) 必死に、反応しかけてる自身を押し留め、子猫に集中する。けれど、すぐそこにある体温を感じて、体が勝手に期待してしまう。欲しい、この男が欲しいと体が訴えてくる。 (だめだ!!) 自分の欲望を必死に押し殺す。それを嘲笑うかのように男の手が俺の体に触れてきた。 ―――するり 「っひ!な、なにすっ」 「ミノリ、もっと栄養をとれ」 「・・・貧弱っていいたいのか」 期待しかけた体が一気に冷え込む。そうだ、この男はそういうやつじゃない。エロい展開を期待していたらしい自分が、おもったよりもずっと落ちこんでいる事を気にしないようにして、男の腕を突っぱねた。
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