【2】一番はイヤです。

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(これも、奴にとってはただのスキンシップなのだろう) 俺だけが盛り上がってるのが悔しくて、やはりキツめの口調で言い返してしまう。 「ちゃんと食ってるよ!消費が激しいだけだ」 「それを栄養が足りてないという」 「わかった!わかったから!もう触るな!気持ち悪い!」 さわさわと腹辺りを撫でてくるその腕を引っ掻いた。引っ掻かれても全く気にしてない。 (ああそうか、こいつ動物とかの世話で慣れてんのか) こういう風に引っ掛かれたり突っぱねられるのに。だからあんだけ俺が言っても挫けなかったのか。 今更気付き、ひどく納得した。 ―――すぴ・・・すぷう・・・ 子猫が寝息を立てて眠り始める。 (お腹がいっぱいになって眠ったのか) 俺と男は視線を合わせ、頷いた。 俺が子猫の毛布を受け取り、先ほどまで置いてあった位置に置きなおす。ぽふぽふっと毛布を整えて、男に目配せする。男がゆっくりとなるべく振動を伝えようにしながら子猫を毛布の上に寝かせた。 ―――すぷう・・・ぷうー・・・ 俺たちの努力のかいあって、子猫が眠りから覚めることはなく、気持ち良さそうな寝顔を見せていた。次第にリラックスし始めたのか、寝返りを打った後、バンザイをして大の字になる。 「ふふ、なんだ、この寝方・・・野生はどこいったんだ」 ひそひそと子猫を起こさないよう気をつけながら呟いた。それを聞いた男が、瞳を和らげ、子猫と俺を交互に見つめる。 (え?なんで俺も・・・?) 男は俺の顔を見て、表情を緩めた。 「やっと、笑ったな」 俺の頬を指で撫でてくる。 「!!」 恥ずかしくて、ばっと下を向いた。追いかけるように指が、俺の頬を撫でてくる。そして頭を、ごしごしと撫でられた。 (やめろ) 手からは確かな暖かさと、優しさが伝わってくる。 (やめろっ・・・そういうの、やめてくれ) 叫びたかった、拒絶したかった。でも子猫を起こすのは忍びなくて、口を閉じたまま俺は立ち上がる。 「ミノリ?」 そのまま俺は店を出た。逃げ出すように、必死になって店から離れた。 “お前が好きだ、一目ぼれだ” 自分の見慣れた道に戻るまで、俺の頭の中ではずっと、男の顔が張り付いて離れなかった。
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