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「はあっ・・・ああっ!」
激しく揺さぶられる。息もできないほど、強引に相手のいいように動かされた。
「もっとっ、うああっ、くう、んんん!」
目の前の男の首に腕を回し、もっととせがむ。首に噛み付き、吸い付いた。
「もっと、激しくっ・・・して、っ」
奥を締め付けると、男は呻いて、腰をガンガンと振ってくる。
(もっと・・・あの男を忘れられるぐらい、激しく、してくれ)
そう願って、名も知らぬ男に縋り付いた。
「はあ・・・」
煙草の匂いが移ってしまった体を見下ろし、ため息をつく。
「なんだ、まだ足りないのか、ヘンタイ学生」
「違うっての」
後ろから抱きつくように絡んできた男を足で蹴った。
セックスの後は触れられたくない。体が敏感になってて感じるのが嫌だ、ってこともあるけど、急に冷めてしまうのだ。色々なことが。
「冷たいやつだな、さっきまでの可愛い姿はどこへいった」
「うるさい、満足したならもう帰れよ」
男は不満げにぼやきつつも、身支度を終わらして立ち上がった。
「ま、ヨかったぜ、ご馳走様」
「こちらこそ、下手くそな腰振りありがとうございました」
「ほんっと可愛くないなお前・・・」
げんなりとした顔で笑いながら、男はホテルの部屋を出て行く。それを見届けてからベッドにもう一度倒れこんだ。
色々な液体で濡れてるシーツで寝転がりながら、うとうととまどろむ。
目を瞑ると、あの男の顔を思い描いてしまう。
今の男じゃない。
ペットショップの、熊原とかいう男。
滑らかな黒髪、鼻筋の通った、力強くも整った顔立ち。180は越えるであろう高身長。低く、大人びた、色っぽい声。
(まるで俳優かと思ってしまうほどの外見なのに)
ネーミングセンス最悪、KY、直球、話が通じない。ありえない。本当にありえないのに。
(どうして・・・あの男のことを考えてしまう?)
忘れたいのに、一週間経った今でも、はっきりと男の顔が張り付いたままだ。
今の今まで抱かれていたが、その間も、あいつの顔がちらついて集中できなかった。
(くそっ・・・!)
どこまで俺を狂わせるつもりだ。
悔しいけれど、体はあの男に欲情してる。
「はあぁ・・・っ、んっ」
シーツの上で、男のことを考えながら自慰を始めた。
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