【3】一番はイヤです。

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「ミノリ」 「お、お前・・・」 熊原秀人だった。 コンビニ袋を手に、俺を見つめてくる。ジャージのような、普段着っぽい服装ですら様になっている熊原にイラついた。 (なんだよ、嫌味か、そのかっこよさは) 自分がなんだかみじめになる。同じ男なのに、こうも差が出るのか。 (しかも・・・) さっき店に行ってしまった分、居た堪れない、恥ずかしさが襲ってきた。 「人違いじゃないすか」 俺がそのまま無視しようとしたら、腕をつかまれた。 「ちょっ、なにす」 「ミノリこれから暇か」 「ひ、暇じゃない!」 「そうか」 否定したのに、熊原は俺をコンビニの外へと引っ張っていく。 「お、おい!聞いてるのか!俺は!」 「聞いてる、暇なんだろう」 「暇じゃないって言っただろうが!!」 「俺は嘘を見抜ける」 「なっ」 当たり前の事のように、物凄いことを言われてしまった。 (う、うそが・・・見抜けるって・・・?!) そんな恐ろしいことができるのか、と言葉を失っていると 「っふ、純粋だな」 喉を鳴らすように熊原が笑った。 「!!な、な・・・騙したな!!」 「騙してはいない、ほら、こっちだ」 ぐいぐいっと腕を引かれ、コンビニの駐車場の奥へと連れ込まれる。 (い、一体、何をする気だ???) 今度こそ俺は何かされるのか、と身構えた。 けれど、それはまた杞憂に終わる。 ―――わん! 「!!」 「散歩、一緒にどうだ?」 どうやら犬の散歩の途中だったようで、コンビニの駐車場には柴犬のウルフ(だっけ?紛らわしい名前だな・・・)がお座りして待っていた。 俺と熊原を見つけると、嬉しそうに尻尾を振り、近寄ってくる。 ―――わんっわん! 「!!」 俺が、鳴き声に一歩後ずさると、背中をとんっと押された。それから撫でるようにさすってくる。 「大丈夫、ウルフは噛まない、怖がらなくていい」 「・・・っち、ちが!!怖くなんか!」 俺の無意識の怯えを見透かされたみたいで、恥ずかしかった。 (どうして) どうしてこうも、この男は俺の事を掻き乱すんだ。 (どうして一緒にいるだけで、こんなに慌てなくちゃいけないんだっ?) 「怖くない!散歩も全然できる!」 「そうか」 リードを渡されて、それを奪い取るように受け取った。
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