【3】一番はイヤです。

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「遊んでと言っているみたいだな」 熊原はそういいながら、公園のベンチに腰掛け、俺と犬を眺めてくる。 「あ、遊ぶって、なにをしたら・・・」 「そこに落ちてる枝を投げてやったらいい」 「え・・・あ、これ」 足元に落ちていた小さ目の枝を、誰もいない砂場の方に向けて投げた。 ―――っひゅ! 音を切るかのように、枝は飛び上がり、公園の端までとんでいった。 ―――わん! その枝を、犬が迷わず追いかけていく。そして着地点でジャンプをして枝をうまくキャッチした。 「すごい!」 無意識にガッツポーズをとっていた。それを微笑みながら見つめてくる熊原。生暖かい視線に気付いた俺は、すかさず腕を下ろし奴に背を向けた。 その頃には犬が戻ってきていて、枝を俺に押し付けてくる。もう一度、投げて欲しいんだろう。流石の俺も犬の気持ちが理解できて、枝をまた遠くへと投げた。 投げては持ってきて、投げては持ってきて。 それを30分ほど繰り返し、俺も犬もへとへとになって疲れきった。 「いい運動だったな」 「おまえ、も、ちょっとは、ゼえっ、ハア、やれよ!」 「俺はいつもやってる」 息も絶え絶えの俺からリードを奪い、犬に結びつける。そして、帰るぞと言ってきた。 「ミノリ、家は近いのか?」 「・・・」 「帰れるか?」 「こんな大都会で迷うわけないだろ、お前と一緒にするな」 「そうか」 そうして、また頭を撫でられた。俺は犬じゃない、お前の店の動物達と一緒にするな。 「熊原」 そう言ってやろうとしたのに、出てきた言葉は思ったよりも柔らかかった。 「ありがとう」 「?」 目を丸くして、俺の顔を見つめてくる。一瞬あと、俺も飛び上がるように驚いた。 (え、えええ?!俺、なに、何言ってんだ??) ありがとうって。何がアリガトウなんだ。何の礼だ。自慰で使わせてもらったお礼・・・なわけ、ないよな。 そこで、混乱した頭に雛の事がちらつく。俺はとっさに、ごまかすように取り繕った。 「いやーあのー、そう、雛が!言ってると思ったから、ありがとうってさ!」 「・・・」
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