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「見つけてくれて、埋めてくれて、ありがとうっていうか、そのーあのー」
「慰めてくれてるのか、ミノリ」
「!!!」
熊原が犬のリードをベンチにくくりつけて、俺の前に移動してきた。腕を伸ばせば触れられる距離。
またもう一歩、近づいてくる。
「ミノリ」
「違う!慰めてなんかっ」
「ミノリ・・・」
「だから違うんだっーんむ?!」
熊原の顔がすぐそこに来たと思えば、唇に柔らかいものがあたる。
(これ・・・熊原のくちびる・・・?)
久しぶりのキスに、体がぶわーっと熱くなった。あれだけ色々な男とヤッている俺でも、キスは早々しない。いや、正しくは、したいと思えないのだ。
(熊原・・・)
触れるだけのキスに、舌が割って入ってくる。互いの吐息が混ざって、クラクラと頭の芯が熱くなった。
「もっと・・・っ」
「ん」
縋るように、熊原の服を掴む。応えるように、舌が深く入り込んできた。互いの舌を絡ませ、ぴちゃぴちゃと音を立てて、深く口付ける。
しばらく夢中になってキスをしていた。
けれど夢のような時間は唐突に終わりを告げた。
「あはは」
公園の横の道から誰かの笑い声が聞こえてくる。俺はすぐに目を覚まし、熊原の体を押し返した。
「ミノリ・・・」
名残惜しそうに、俺を見つめてくる。伸ばしてきた腕を跳ね返し、一歩、後ずさった。
「や、やめろ!!俺の名前を呼ぶな!」
「・・・」
「き、キスとか・・・二度と、するな!!気持ち悪いんだって言ってるだろ!!」
感情が一気に冷めていく。
(な、何をしてるんだ、俺は・・・!!)
我に返り、今さっきまでの自分を思い出しては、それを反動にして叫んだ。熊原はそれをじっと見つめてくる。
「俺はっ・・・俺は!!一番は嫌なんだ!!」
そう叫び、立ち去った。
公園の入り口で誰かとすれ違った。そのとき、ぶつかりかけて、通行人の迷惑そうな声が聞こえてくる。でも、それを気にしてる余裕はなくて。
俺は何も考えたくなくて、ただ走り続けた。
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