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『ミノリ、俺はミノリが好きだ』
『そういうの、軽蔑する、近寄るな』
同じ人間のものとは思えない程、対照的なセリフ。
「・・・」
天井を眺めながら、幾度目かのため息を零す。
「馬鹿馬鹿しい」
勢いをつけてベッドから起き上がった。
ダブルベッドの横には・・・誰もいない。先に起きて帰ったのだろう。
名前も知らない相手の顔。すでに顔も忘れかけてる。男を思い出しかけて顔をしかめた。
「昨日の奴は下手だったな」
独り言がホテルに響く。
―――ぴぴぴっ
携帯が騒々しい音を立て始めた。時計を見れば、七時前だった。
「学校、いくか」
身支度を済ませ、ホテルを後にする。
「ミノリー!」
大学の講義を終え、廊下を歩いていると背後から声がかかった。振り返ると同時に首に衝撃が来る。
「今日!合コンやるけどミノリもこいよ!」
首に腕をまわされ身動きがとりにくいまま悩むふりをした。
「わるい、俺パス」
「ええー!」
専攻が一緒のこの男とは、そこそこ大学でも仲がいい。お互いプライベートを詮索してこないから居心地がいいだけかもしれないが。
「ミノリいると盛り上がるのによー!」
明るい茶髪にピアスを光らせるこいつは、合コンが大好きなヤリチン野郎である。毎月、というか毎週合コンをやってはお持ち帰りをして楽しんでるとかなんとか。
しかもこんだけ好き勝手やっておいて、特定の恋人がいるらしい。
どんな恋人かは聞いたことないけど、よくこんな男の恋人でいられるものだ。
「俺、昨日ヤッて疲れてるから」
「うわなにそれ嫌味~」
俺の言葉に、悪い笑みを浮かべる。
「でえ?どんなヤラしい子だったわけ?」
俺が男でしか満足できないことは、誰にも話していない。
合コンも普通に行くし、そこで会った女とも関係を持ったこともあった。起つには起つし。満足できないだけで。
(ま、一番の理由は・・・)
女の方が情をわきやすいから。
抱いている内に相手が勘違いしてしまうから。
男の方を選んでるだけ。抱かれるのは嫌いじゃないし。
まあ、我ながら、酷いやつだとは思う。
(でも、そういう人間なんだ、俺は)
自嘲的な笑みを浮かべ、頭を振った。
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