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「下手だった」
「うわ、最悪よ、この男!」
おねえ言葉で茶化すように小突いてくる。
「そこは俺らの技量でカバーっしょ!ま、いいや、じゃ午後の講義でまたよろしくちょー」
「あ、俺サボるから」
「どうええっ」
「じゃ、合コンファイト」
「あっおい!ミノリ!」
追いかけてきたそうな声。でもこいつは、絶対それ以上は進んでこない。だからこそつるんでいるのだ。
大学の騒がしい廊下を進み、俺は喧騒から逃げ出した。
あてもなく、ブラブラと街を歩く。
目に留まった看板や広告の文字をぼーっと読んだりするだけを繰り返した。
「・・・だめだ、足りない」
苛々する。昨日の男では満足できなかったみたいで、体が熱い。どうしようもなく疼く。
(くそっ・・・誰か、)
人波を見回すが、昼の今の時間帯はそういう奴もあまり見かけない。
(電話・・・いや、知ってる奴いないか)
自分からそういうのは絶っていた。どんな奴が相手でも、連絡をしたり、回数を重ねることはない。
自分に愛着なりなんかの感情がわいてしまうかもしれない。
だから一回きり。
「くそ、こういう時、不便だな」
さっきの合コンの誘い、行けばよかった。今の状態なら女でも抱けただろうに。
「・・・。」
ふと、おもむろに、携帯を開いた。
迷わずLINEを確認する。
通知なし。
(・・・当たり前、か)
携帯を閉じ、悪態をつく。
なんとなくムシャクシャして、人を避けるように、狭い路地にはいる。街中と違いゴミ袋が散乱していて、汚らしい路地の道を俺は歩き続けた。
すると。
―――にゃあっ
黒猫が目の前に飛び降りてきた。どうやら路地の壁を歩いていたらしい。
(野良猫・・・?)
にしては毛並みが綺麗過ぎるような。首輪はないけど、なんとなく飼い猫っぽい雰囲気のその猫は、何を思ったのか・・・俺に飛びついてきた。
「えっえ??おい!」
肩に乗っかってきたと思ったら、もぞもぞとフードの中に入ってくる。
「おいこら!猫!」
汚いだろ!
急いで猫を取り出そうとしたときだった。
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