【2】一番はイヤです。

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「見つけた」 そんな言葉が降ってきた。 (え・・・?) そして、次の瞬間・・・ ―――がばっ 誰かに抱きつかれていた。 力強い腕、熱い胸板、すぐに男だとわかった。顔を上げれば、目の前に驚くほど整った顔があり、じっとこちらを見ていた。硬派そうな顔のくせに瞳の光は強く、見つめているだけで、射止められてしまいそうだった。 「なっ・・・離れろ!」 腕の中で暴れて、男を押し返そうとする。けれど、男は俺をはなそうとはせず、逆に力を込めてきた。 「おい!」 「動くな。」 抱かれたまま、瞳をさらせず男と見つめ合い続けていたら、男の手が俺の頬を擦る。 (え、えっ??) そして、フードに手を突っ込んだ。 ―――にゃあ! 黒猫を掴みあげる男の手。 「あっ」 「よし」 猫を抱きかかえ、満足げに瞳を和らげる男。 そこでやっと体が離れ、男の全身を観察することができた。 硬派な顔立ちを引き立てるような黒いシャツ、洒落たズボンに靴。けれどその腰には・・・可愛らしいくまの絵が書かれたエプロンがあった。 そのエプロンにはロゴが入っていた。 “ペットショップ くまくま” 「く、くまくま・・・」 この硬派な男がそんなエプロンを。 壮絶に似合わない。 似合わなすぎるそれらを言葉を失いつつ見つめた。 「あんた」 ふと男が口を開く。その男の声は、低くて、ジンと体の奥に染み入ってくるかのように心地いい響きだった。聞き惚れていると 「迷子か」 硬派な顔を少し間抜けに歪めて尋ねてくる。 「は?」 「いや、お前も迷子なのか」 「は?」 も? お前、もしかして迷子なの?? こんな街中で?? 「シャークを追いかけてたら、こんな所に来ていた」 「はあ」 「ここはどこだ」 ここはどこだ。 こんな風に堂々と格好良く、このセリフを言い放つ男ははじめて見た。いや、これほど格好良く言う男は他にいまい。エプロンといい言動といい残念すぎるイケメンだ。 (本当に、黙っていたら俺の好みど真ん中なのにな) 呆気にとられながらも、俺は携帯をあけアプリを立ち上げた。 「あんた、そこのショップの店員?」 エプロンを指差し聞くと、ああ、と男は頷いた。
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