迷子

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「おい、どうした」 不機嫌な光輝が大股でアタシの方へと歩いてくる 「ちょっと、光輝くん」 三沢さんが玄関を開け、吠え続ける子犬に手を伸ばす その手を振り切って 外へと飛び出してきた子犬を「おい!」目を見開いて、追い掛ける光輝 「チビー、止まって」 光輝と子犬を追って走るアタシたち 「大変! あのコ、黒田山へ向かってる」 「莉乃、窪田先輩に連絡して」 言いおいて、全力で駆け出した駿の背が遠退いていく やだ、どうしよう 山の登山道へ踏み込んだ光輝と駿が心配で「さらちゃん、電話貸して」半泣きで三沢さんに縋った 「落ち着いてりっちゃん、スマホあるから」 懐かしい呼び方に涙が零れた 「電話番号わかる?」 「うん」 「じゃあ、ダイヤルして」 「うん」 あー、駄目 ダイヤルを押し間違えた 二回、三回、四回と間違える内に腹が立って「連絡させてよー! バカ!」黒田山に向かって叫んでいた さらちゃんに代わっても アタシが押しても どうしても最後の数字から指がズレてしまう どうして? どうして窪田先輩に連絡取らせてくれないの 二人とも戻ってこない 子犬の声も聞こえない 怖い 怖いよう 立っていられなくて、しゃがみ込んだアタシの肩に手を回したさらちゃんの凛とした声が聞こえた
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