迷子

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「私の犬だから、責任とって連れ戻してくる」 ダメ、さらちゃん、ぜったいに駄目! 慌てて掴んださらちゃんの手、ガタガタ震えてる それでも、黒田山を見据えるさらちゃんの姿に、胸が打たれた 「一緒に行こう、一人より二人の方がぜったいにいいから、ね?」 もうヤケクソだ 立ち上がって、肩を怒らせ歩いていく 「りっちゃんはダメよ。窪田先輩を呼んできて」 「いや、さらちゃん一人に行かせない」 「もう、強引なんだから」 「さらちゃんほどじゃないし」 顔を見合わせて、ぷっと笑った 何年振りだろう さらちゃんの屈託のない笑顔を見るのは 「空気が重いね」 「うん、呼んだクセして脅すなんて性格悪すぎ」 「山に性格なんてあるの?」 「知らないけど」 くだらない会話をしてないと、怖くて山に登れない 夏だというのに寒くて さらちゃんと腕を組んで「おーい、光輝ー、駿ー、チビー」声を張り上げ歩いた やだ、どうしよう 歩いても、歩いても山道に終わりがない 振り返れば一本道 普通に歩けば山頂まで30分もかからないのに、もう一時間以上歩いてる 「窪田先輩に連絡は?」 「だめ、圏外」 こんな低い山で圏外って、あり得なさすぎる
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