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パァッと開けた視界に、眩しいくらいの松明の灯火が見えた
光の影に隠れて顔は見えないけど、あの細いシルエットは駿、犬の綱を握ってるのは光輝
そして、どこの国の人?
って、いいたくなる格好をしてるのは窪田先輩
やった、助かった
ギュッと握ったさらちゃんの手から、興奮が伝わってくる
思わず
駆け出そうとしたアタシたちは
「走るな!」
窪田先輩の叱責に足を止め
「絶対に後ろを振り返るな。焦らず、一歩ずつ、ゆっくり前に足を出せ」
やだやだ
なにそれ、後ろに誰かいるの?
後ろを意識した途端、冷たい風が足元から吹き上がり、太腿を抜け、背中を通って、首筋を撫で、髪を勢いよく吹き上げた
・・・・・・・・・・・・、
ぶるっと震えたアタシの産毛が逆立って、皮膚がざあっと粟立ち
一拍遅れて
ーーーーーッ、
後ろに立つ恐ろしいものの気配を、感じ取って、噛み合わない歯がカチカチ鳴りだした
怖い、無理、歩けない
さらちゃんと腕を組み、窪田先輩であろう人物にSOSを送る
来て、迎えに来て
手にした榊に清酒をかけ、下から上へ、上から下へ、舞うように動かす彼の周りで
ぽーっと薄明かりが灯り
吸い込まれるように、暗闇の中へ消えていくアレが何なのかは、怖いから聞きたくない
ゆっくり、慎重に
アタシたちへと歩みを進めてくる先輩を見つめ
足元でくるくると渦を巻く風がスカートを膨らませて、バタバタ音を立て、冷たく、生温い風を巻き上げても、恐怖を必死に耐え
「俺といても、後ろは振り返るなよ」
窪田先輩に救出された
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