迷子

13/14

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
パァッと開けた視界に、眩しいくらいの松明の灯火が見えた 光の影に隠れて顔は見えないけど、あの細いシルエットは駿、犬の綱を握ってるのは光輝 そして、どこの国の人? って、いいたくなる格好をしてるのは窪田先輩 やった、助かった ギュッと握ったさらちゃんの手から、興奮が伝わってくる 思わず 駆け出そうとしたアタシたちは 「走るな!」 窪田先輩の叱責に足を止め 「絶対に後ろを振り返るな。焦らず、一歩ずつ、ゆっくり前に足を出せ」 やだやだ なにそれ、後ろに誰かいるの? 後ろを意識した途端、冷たい風が足元から吹き上がり、太腿を抜け、背中を通って、首筋を撫で、髪を勢いよく吹き上げた ・・・・・・・・・・・・、 ぶるっと震えたアタシの産毛が逆立って、皮膚がざあっと粟立ち 一拍遅れて ーーーーーッ、 後ろに立つ恐ろしいものの気配を、感じ取って、噛み合わない歯がカチカチ鳴りだした 怖い、無理、歩けない さらちゃんと腕を組み、窪田先輩であろう人物にSOSを送る 来て、迎えに来て 手にした榊に清酒をかけ、下から上へ、上から下へ、舞うように動かす彼の周りで ぽーっと薄明かりが灯り 吸い込まれるように、暗闇の中へ消えていくアレが何なのかは、怖いから聞きたくない ゆっくり、慎重に アタシたちへと歩みを進めてくる先輩を見つめ 足元でくるくると渦を巻く風がスカートを膨らませて、バタバタ音を立て、冷たく、生温い風を巻き上げても、恐怖を必死に耐え 「俺といても、後ろは振り返るなよ」 窪田先輩に救出された
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加