迷子

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細いくせに速い 制服のズボンが、吹き飛ばされそうなほどバタバタ風に揺れてるのに 平気な顔で走るな 「酷くない、優しいだろ」 「優しくない、乙女の息が切れるまで走らせてサイテー」 足が軟体動物 ぐにゃぐにゃして、上手くゴムスリッパを履けない と言うより、靴を脱げない 踵をお尻まであげて「エイ」ふう、やっと落とせた 「いつから乙女になったんだ」 声が変 ちょっと上擦ってる 横目で確認した駿の耳が、ほんのり赤い ・・・・・・スパッツ履いてるし 恥ずかしいことなんか、ないし 自分に言い訳を重ねても、そわそわする駿のせいで、アタシまで顔が赤くなってしまう 「あのさ」 教室のドアの前で立ち止まる駿 駿の半歩後ろで 俯くアタシ 「うん」 いつもと違うアタシたちの雰囲気に、気付く人はいるのかな あ・・・・・・、広い 薄っぺらの肉体はぜんぜん、男っぽくないし、異性を感じもしなかったのに 駿の肩は、いつの間にか広くなってる 「また、放課後な」 「はあ?」 思わず顔をあげたアタシが見たのは、駿の背中 振り返ることなく 片手をひらひら振って、隣の教室へ消える ガラガラ、ピシャン 教室の扉の音がやけにはっきりと聞こえた
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