水。

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 ゴクン。  蒸し暑い。  夜中に目が覚めて、台所の蛇口をひねって水を飲む。  クーラーをつけたいが、この古い団地にクーラーはない。  取り付けようにも金がない。  熱中症で死ぬのが先か、夏が終わるのが先か…。  ゴクン。  ぬるい水。  普段から鉄臭いと思っていたが、今日は特に酷い。  古い団地だから、パイプも錆びているんだろう。  浄水器をつけたいが、金はない。  ゴクン。  汗だくだ。  もう一杯飲む。  不味い。  ゴクン、ゴクン。    やけに静かだと思ったら、下の階の子供の声がしない…いつもなら最近生まれたばかりの赤ちゃんの夜泣きが始まる時間だってのに…?  ああ、そう言えば今は夏休み。  先週、奥さんと部屋のドアを開けたら鉢合わせしたっけ…旅行に行くって言ってたかな?  ゴクン。  ソレにしても水が不味い。  9月1日。     寝ぼけながらテレビをつけて、朝のニュースを見る。  ん?  映っているのは、この団地。  ニュースキャスターが、苦悶の表情を浮かべ読み上げた。  『_______団地の貯水槽から乳児の遺体…母と子に何が______』  ゴクン。
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