第1章 初日から難あり

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そう思い立った時には既に足が動いていた。 気付けば睨み合う両者の間に挟まれ、震える足を隠しながら毅然とした態度を振舞う。 「君達は北花帷の生徒ですね。ここは西花帷、貴方達は自分の学校へ戻りなさい」 教師という立場の権力を振りかざし、強く威厳のある声で凄みを掛ける。 しかし相手は気にする様子もなく「あぁ?!」と逆にドスのある声で返されてしまった 「教師が何の用だよ」 「邪魔すんじゃねぇ、そこどけや!」 「退きません、これ以上ここに残ると言うのなら警察を呼びます。さっさと立ち去りなさい!」 互いに一歩も引かず睨み合う 元々優良な学生生活を過ごして来た瀬戸にはこう言う事は殆ど経験がなく、こうしている間も心臓はバクバクと破裂寸前だった だが此処で引くわけにはいかない 何としても此処にいる者達に自分の生徒に対する真っ直ぐな気持ちを分かって欲しかったのだ (話せばきっと分かってくれる!) そう心の中で信じていた そうこうしている内に全く引く様子のない瀬戸に気勢を削がれた他校の生徒達はチッと舌打ちをし、「あ~ぁ、やる気なくなった」とゾロゾロと体育館を後にして行く 「・・・はぁ」 漸く緊迫した状態が解け、ホッと一安心して長いため息を吐く 「おい」 すると突然背後から肩を引かれ無理矢理後ろを振り向かされると、そこには気迫のある顔で瀬戸を睨み付ける設楽の姿があった 「何してくれてんだよ。教師如きが入ってくんじゃねぇよ」 喋り終わると共に肩を強く押され蹌踉めく 騒がしかった体育館が一気に静まり返り、誰もが呆然と立ち竦む瀬戸に視線を移す 「行こうぜハロ」 瀬戸の目には尚も冷たい視線を送り続け踵を返すと松田を引き連れ去っていく設楽だけが映る 「・・・だから俺達の事に口出しするなっつったろ」 いつの間にそこに居たのか、耳元で宮藤が囁きハっと横を向く 「く・・・宮藤・・・」 「もう邪魔すんじゃねぇぞ?せ ん せ い」 口元は笑っている。しかしその目は笑っていなかった。 脅しとも言えないその言葉に寒気を感じ全身から鳥肌が立つ (どうして・・・) 口に出したくてもその目に囚われたまま身体が動かない その様子を感じ取ったのか、宮藤は「ふっ」と笑い視線を離す そして彼もまた早々とその場から立ち去っていくのであった
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