第1章 初日から難あり

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「本日よりこのクラスの副担任を任されました瀬戸 誠です。」 4月。 春の穏やかな風に乗り、桜の花びらがヒラヒラと優雅に宙を舞う季節。 念願の教師の夢を叶え西花帷高校2年G組の教卓に立つ一人の青年がいた。 瀬戸 誠(せと まこと)。大学の教育学部を今年3月に卒業したばかりで、そのスーツを身に纏う姿は何処かまだぎこちなさを感じさせる。 「よ・・宜しくお願いします」 緊張のあまり裏返った声が教室内に鮮明に響く。 いや、緊張というより戸惑いの方が多いのかも知れない。 というのも、現在この教室の中には副担任の瀬戸と担任の教師一人を抜かして生徒がたった3人。縦5列、横6列に整列された机に各々穴を埋める様に座っているのだ。 「えっと・・・斎藤先生。生徒は此方の3人だけでしたっけ?」 戸惑いを隠せない様子で瀬戸は担任教師へ視線を移す。 (初日からこれかよ) 心の中では初赴任という事でここまで意気揚々と学校へ足を運んだ自分に歯を軋ませながら、それでも出来るだけ表情には出さないように引き攣った笑みを浮かべた 一方斎藤と呼ばれた教師の方は慣れた様子で「まぁ、こんなもんでしょうね」とサラリと言い放つ 「今ここに来ている者だけでいい、出席をとるぞ。先ずは宮藤(くどう)」 「はい」 宮藤と呼ばれた生徒は、全く持ってこの状況について行けてない副担任に多少憐れみを込めた視線をチラッと目を向けるも直ぐに担任の方へと移した (何で・・何でこの担任、さも当たり前みたいに点呼取ってんだ!?え?これが普通なのか?生徒が3人しか学校に来ていないのに!?) 「田嶋」 「へ~い」 「牧野内」 「うすっ」 本来ならば30人もの生徒の名前を呼ばれるものの、瀬戸が悶々と心の中で悩んでいる内に3人の数少ない生徒の出席確認はあっと言う間に終わってしまった
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