第1章 初日から難あり

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「あ~えっと、あんた。G組副担任の~」 斎藤が先に職員室へ向かって行った突如背後から気の抜けた声で呼び掛けられ何事かと振り返る (と言うより教師に向かって、あんたって) 「何でしょう、宮藤君。」 そこには先程教室で出席確認を済ませた宮藤 万統(くどう ますみ)の姿があった。 初めて見た人の顔と名前を一瞬で覚える特技を持つ瀬戸にとって、朝一で渡されたクラスの生徒の名簿と写真を頭にインプットするのに難は無かった。 今回もその顔を見た瞬間に頭に名前が浮かんだ 「あれ、もう名前覚えてんの?凄いな。」 「人の顔と名前を覚えるのは得意なので」 へー、感心感心。と少々人を見下す様な態度で答えられ瀬戸は不快な気持ちを抑える 「それより、用件があるんじゃないの?それから私の名前は瀬戸先生ね」 と技と先生を強調して言うも、当の宮藤は「うん、瀬戸ちゃんね」とあっさり別の呼び方に変換していた。 (人の話全然聞いてないな) 黒の短髪をワックスで前髪だけ立たせて固め、瀬戸の目線より少ししたの身長のその少年は中性的な顔をしている。特別整っている訳では無いが、女子にはモテる顔の作りをしているのではないだろうか。子犬をイメージさせる円らな瞳が瀬戸の上から下まで、全身を隈なくチェックしている。 「瀬戸ちゃん今日からこの学校来たんだよね。頑張れよ~ここ、ヤバいの多いから」 「ヤバいの?」 興味深げに聞き返すと、それまで瀬戸の全身をチェックしていた視線がパッと合わさる。 「そうそう。まぁ、暫くすれば分かると思うけど。」 俺もその一人だろうし。と続ける 「前の副担は超ヤバかったけど、今の所あんたは害も無さそうだし。辺に俺たちの事勘繰ったりしなけりゃ何もしねぇよ」 「・・・はぁ」 若干の脅しが入ったその言葉の意味を理解するには前回の副担任の話を思い返せばそう時間も必要としなかった 要は「自分達の事に口出しするな」という事であろう 相変わらず宮藤は人懐っこくも何処か冷たい視線を自身に送り続けている 「とりあえず、気をつけるよ」 「おう。それからもう少ししたら他の奴らが学校来るってさ。集会までには着くんじゃないか?一応連絡しといたから」 そう用件だけ簡潔に伝えると「それじゃ、教室戻るわ」と背を向けて去って行くのであった
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