第1章 初日から難あり

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時を同じくして校舎の屋上、フェンス端の丁度日陰になる場所に寝転ぶ一人の男の姿があった。 植原 聖(うえはら ひじり)。 銀色のウェーブの掛かった髪がサラサラと風に吹かれて揺れている。 口元には煙草と咥えたまま、時折手に取り白い煙を吐き出す。 ヘビースモーカーという訳ではないが、考え事をする際にはこうやって煙草を吹かしつつ頭の中をスッキリさせるのが本人には一番効率が良い方法だった。 (良い天気だ) 春の陽気に絆されウトウトと睡魔が襲う 植原にとってこの場所で煙草を吸いながら日光浴をする事がこの上なく幸せな時間であった。 体育館では全校生徒が既に集まり教頭先生からのありがたくも眠気を誘う挨拶を聞き、退屈な時間を過ごしているという事などどうでも良かった。 ふぁ~っと大きな欠伸をついた所で何やら校舎の下の方から騒がしい声が聞こえ、音を確かめる為にゆっくりと体を起こす 「ま~た始まったのか」 下から響く怒声の様な声を確認した所でそう呟くと、面倒事には巻き込まれたくないと再び先程起こした体を地面に落とすのであった
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