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悪ガキ
近所にとんでもない悪ガキがいた。
そこいらに変な落書きをしたり、道に物を置いたり、突然奇声を張り上げたり。
酷いと、石を投げるとか、駐車場から出ようとする車の前に飛び出すとかまでして、近所の全員が大迷惑の大激怒。
何度も捕まえて叱ってきたけれど直らず、家に文句を言いに行っても、その子の唯一の家人であるおじさいんが出てきて、怒鳴って追い返すばかりだから一向に悪行は収まらない。
みんな辟易して、どうにかならないものだろうかと思案していたけれど、ある日、その願いが天に通じた。
そこの家のおじいさんが倒れ、病院に運ばれたのだ。
その後のおじいさんと子供がどうなったのかは知らないけれど、少なくとも、二人が家に戻ることはなかった。後々噂で聞いた話では、おじいさんはなくなり、子供の方は施設へ行ったとか。
かわいそうと思う気持ちはあったけれど、それ以上に、あの悪ガキがいなくなったことにせいせいした。
これでようやく、ここいらに平和が訪れると、近所の人間は皆安堵した。
でも、とんでもない悪ガキがいなくなったというのに、最近この近所の人達の表情は暗い。
ちょっとした事故に遭ったり家人が病気になったり、職場や学校でのトラブルが相次いだり。
あの子とおじいさんがいなくなってからのことなので、関連はないと思いつつも、みんな、呪いでもかけられてるんじゃないか、なんて冗談を口にしている。
そうそう。呪いといえば、つい先日、隣の家の外壁と門扉の隙間から、何かお札みたいな物が出てきたっけ。
今まで気づかなかったけれど、随分長いこと雨風に晒されていたみたいで、もうボロボロだったって。
それを見つけて掃除をしている姿を見て以来、あそこの奥さん、具合を悪くして寝込んでいるけれど、大丈夫だろうか。
あと、大丈夫ついでに思い出したけれど、先週、三件向うの旦那さんが、駐車場を出ようとした時に、何かが目の前に現れたとかでアクセルを踏み込んでしまい、通りが勝った自転車と事故を起こした件。あれ、どうなったんだろう。
ちらと聞いた話じゃ、避けようとハンドルを切った分、自転車の人より旦那さんの怪我がひどいってことだったけど。
せっかく近所から、とんでもない悪ガキ一家がいなくなったっていうのに、なんだかあちこちついてない。…うちも、悪いことが起きなきゃいいんだけどね。
悪ガキ…完
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