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「魔法使ったのよ」
ミライと名乗る少女はまたスマホを弄りながら、適当そうに面倒くさそうに答えた。
「………」
――こいつ、厨二病患者だったのか。可哀想に……
現実から逃げたかった。ここまで大胆な行動をしておきながら結果、魔法。正体不明、目的は監視。こんな設定のラノベとかありそうだ。まさかアニメを観ていて美少女が突然現れる典型的パターンについて思っていたらガチで来るとかなんだそれ? これ他人に話したらドン引きの前に病院行けって言われるぞ……
俺は頭を抱えるしかなかった。現実離れも甚だしい。ちょっと待て。監視ということは――
「お前、いつまで居るんだよ……」
「監視が終わるまで」
スマホを弄りと同じ体勢で話すミライに俺は絶句した。いや、もちろん女が俺の部屋に居座るとか逆に歓迎ものだが、いやいや待て。こいつの事は一切分からない。他者に見つからない理由を魔法と答える。青髪に青紫の瞳というアニメのキャラデザそのままでいながら天然に見える容姿。
――まさか……こいつ二次から来たのか!?
……この結論に至って俺は悟った。うん。疲れてる。いろんな意味で疲れてる。寝よう。
俺は静かに立ち上がるとパソコンの置いてある机のイスに腰掛けた。そしてヘッドフォンを付けてネットサーフィンに興じた。
――こうしていれば幻覚からも覚めるだろう。
訳が分からな過ぎて俺の十八番である現実逃避を発動させた。
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