第1章

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 真央たち兄妹がスマホを持つ時に親が決めた約束事が『夜10時にはスマホをリビングに置く』という事だった。時代錯誤、横暴と反発したのは妹だけで。 「大体さ、お父さん厳しい事言った割にほとんどチェックして無いじゃん。それなのにお姉ちゃん馬鹿正直に毎日時間になったら下に持ってちゃうんだもんなぁ・・・こっちがやりにくいよ」 「何言ってんの、いつも夜更かしして色々してるくせに・・」 「え・・だって、そんなに簡単に止められるわけないじゃん。友達もそうだけど彼氏ならずっと話していたいって思わない?」 「でも、あんまり遅くなると次の日の練習にくるから・・」 「ボート、ボート、お姉ちゃんそんなに楽しい?」 「楽しいっていうか、面白いよ」 「どこが? あっつい中汗だくになって」  二段ベッドの上段から聞こえてくる妹の容赦ない言葉に真央は言葉に詰まった。 「あんただって吹奏楽してるでしょ。ひとそれぞれよ」  責められっぱなしのおしゃべりを終わらせたくて、真央は早口でおやすみと告げると頭からタオルケットを被った。  しばらくして部屋の明かりが消えてヘッドライトの薄い明かりの中真央は今日の出来事を思い返した。  自分より年上でしかも背の高い男の人に告白された────。  その時の上村の声が急に頭の中に響いてそれが何度も繰り返され、耳奥にこびりついて離れなくなり真央の口から悲鳴に似た声が漏れた。 「きゃっ・・ぶぐっ」  妹に聞かれてはマズイと慌てて口を押さえたら、指の隙間から息が漏れてしまった。  何も反応しない妹の様子が気になってそうっと頭を出すと、天井に映る影がテンポよく揺れていた。────イヤホンで音楽を聴いている。よかった気づかれていない。  付き合って欲しい────上村の言葉はなおも繰り返される。  嫌じゃなかった。だけど嬉しかったかと聞かれたら──── (困ったなぁ・・・・)  学校生活で面白くない事が会った時は部活で体を動かして発散していたけど、こういう時の対処法は初体験だ。  また会いに来てくれると上村は言っていたが、次はどんな顔をして会えばいいのだろう。  そういえば自転車の鍵を拾って届けてくれたお礼をしていない。  明日友達に聞こう───部活の疲れで目を閉じたらすぐに眠りについた。
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