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4月24日 金曜 希望ヶ原高等学校(朝)
キーンコーン、カーンコーン…一限目始業のチャイムが鳴る中、今年の春から高校生になった希原正矢は、屋上へ続く階段を上る。彼は、社会的不満で授業を常習的にサボるような生徒ではない。ただ今日はあまり気乗りしないから、こうして抜け出している。
正矢は屋上へと出る扉へ手を掛けて押し出した。隙間から風が吹き込んで来る。彼は屋上に出るとすぐ空を見上げた。どこまでも続く青い空。
プシュ…まるで空気の抜ける風船の音。この風景に似つかわしくない音で正矢は眉をひそめた。やがて、空を赤が浸食する。
男子「ガアアアアア!!」
男の叫び声、正矢は驚き視線を下ろした。彼の目に映ったのは強烈なまでの赤。そして、鼻をつく鉄錆の臭い。口と鼻を押さえて彼は後退る。
屋上の中央、二人の人物が対峙している。いや、片方は“人だった”もの…半身が欠如し、噴水のように赤い飛沫を飛ばす。“誰もいない”はずだった。しかし、いつの間にか己の意識へ入り込んだ光景、正矢の頭の中は真っ白になり、警鐘を鳴らし続ける。
バサッ…何かがはためく音、彼は意識を元に戻した。そして、もう一人に目を奪われる。呼吸すら忘れるほど…
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