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正矢はその場から動けずにいた。今、女天使は彼に気が付いてない。逃げるなら今だが…体が動かない。
ニャー…猫の鳴き声。正矢は金縛りが解けたように驚く。彼が横へ目を向けると、黒猫が見ていた。ニャー…再び死を呼ぶように鳴く黒猫、彼は背筋の凍る思いだ。
天使「?」
天使が猫の鳴き声で後ろへ振り向く。当然、正矢にも気付いた。二人は見つめ合う…三秒にも満たない間。
正矢「ひっ!」
正矢は天使の持つ物に気付き、恐怖で尻餅をつく。赤い滴の落ちる日本刀…ここで何が有ったか。想像するのも容易い。天使の前にある肉塊が倒れて音を出す。
ニャー…再び猫が鳴いた。
正矢「うわあああああああ!!」
正矢は情けない悲鳴を上げ、弾けるように立ち上がって扉へ走る。急な展開に泣きそうになりながらも必死に逃げ出した。心臓が張り裂けそうな音、息をするのも忘れ、全力で階段を降りる。
希望ヶ原高等学校 普通科棟 1年1組(朝)
一限目…歴史の授業が始まり、多くの生徒が教師の説明を聞き、板書をノートへ書き写す。
バン!…大きな音と共に、後ろの入り口が勢いよく開いた。教室にいる全員が何事か?と振り向く。
正矢「はあ…はあ…」
正矢は肩で息をしながら、教室に入ってきた。彼は気付くとここにいたのだ。
教師「坊…こほん。希原君、遅刻ですよ」
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