第2章

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 彼は息を切らせながら、玄関の鍵を掛ける。勢いで家に帰ってしまったが、今日は都合よく家族が出払っている。  正矢は一旦落ち着くためにリビングへ入り、食器棚から取り出したコップに水道水を入れて飲み干す。そして、学校での出来事を思い起こした。  あの光景を思い出すだけで吐き気がした。喉を這い上がるそれを飲み下すと、あの場にいた相手の事を思い返した。  あれは、誰なのか…何故、人を殺したのか…格好は完全にコスプレだが…ただ何となく愉快犯には思えなかった。それに…正矢は整理がつかず、頭を掻く。  正矢が一息付くために椅子へ座ろうとした時、ピンポーン…ピンポーン…と呼び鈴が鳴った。彼はバッ!と背筋を伸ばし、玄関の方向を見る。しかし、今の場所からは玄関先は見えない。  正矢は来訪者を確認するためにインターホンのモニターを写す。しかし、奇妙なことに画面が黒いまま点かない。最近まで使えたはず…ピンポーン…ピンポーン…と尚もなり続けていた。  平日の朝、声も上げず、呼び鈴だけを執拗に鳴らし続ける。明らかにおかしい…彼には予感があった。  正矢はリビングを出て、静かに二階の自室へと上がる。  正矢は自室に入ると、窓から玄関を見た。しかし、屋根と庇で見ることが出来ない。家の構造上、来訪者に気付かれず相手を確認できる窓がないのだ。
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