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シュッとした輪郭に左右均等に整った顔のパーツ。日に焼けているわけでも色白過ぎでもない程よい顔色に、艶やかな薄めの唇。
身長も百五十八センチの私が見上げるほどだから、多分二十センチは高い。
スプレーで整えた黒髪に、すっとした出で立ちの彼は、入学当時から随分と目立っていた。
それでも人懐こいとは思えない雰囲気のせいか、気軽に近づけない、声をかけられない、そんなイメージがある。
だからといって変な噂があるわけでもない。例えるならそう。おおらかな輝きをもつ太陽というよりも、神秘的な光を放つ月といった感じだ。
そのためか実際、彼に告白したという勇気がある女子の話は聞いたことがない。どちらかといえば、遠くから密かに憧れられるタイプなのだろう。
そういう意味で、私も例外じゃない。
だから余計に今の状況は、信じがたいことだった。
「ああ良かった、オッケーで」
そんな男子を真正面に、突っ立ったままでいる私の前で、グレーのカーディガンを着た彼の口元が軽く緩んだ。
その表情に私の心臓は激しく鼓動を打ちながらも、心はまだどこか遠くへ行ったきり戻ってこない。
これはどういうこと……?
本当に、私は告白されているの?
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