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結城春樹(ゆうきはるき)、22歳。
優君のダイバー仲間で、
優君と一番仲の良かった相棒、大切な親友。
2年前、
優君の事故を知らされた場所で、
お前のせいだ、
人殺し、
許さない、
そう激しくダイバー仲間達が私を責める中、
ただ一人私の味方になってかばってくれた人。
あの日を忘れたことは一度もない。
優君と交際していた当時、
よく3人でふざけて遊んだ。
いつまでもついてくる人物に反撃。
くるりと後ろを向いて不機嫌丸出しの声で言う。
「お説教なら聞きたくない」
「違うって。これを渡そうと思っただけだから、ほら」
そう言った相手は、
近づいて、
数字が書かれた小さな紙を渡した。
「スマホ変えて電話番号変わったから。それ、俺の新しい番号」
「・・・」
歩道に設置されている吸い殻入れに、
迷うことなくそれを入れた。
「ぎゃああああっっ、おまえどこに捨ててんだよ!!!俺のマイナンバーがっ」
「イタ電攻撃されちゃえばいい」
「かおりーーーー!!」
「呼び捨てにしないでっ」
即効で拾い上げて、
紙についたタバコの灰を払いながら喧嘩声で呼ぶから。
思わず喧嘩声で言い返す。
はたから見れば、
迷惑な恋人同士の痴話喧嘩にしか見えないだろう。
「今後わたしの半径5センチ以内に近づいたら通報するからっ!」
「・・・・・・」
大きな声でそう大宣言してやった。
それに対して相手からの返答はない。
スタスタと一人歩いて、
そして、ハタと気付く。
「間違えたっ、半径5000キロメートル!」
「薫、愛してるよ~っ!」
振り向いて訂正するもすでに遅し。
勝ち誇ったように、
相手は満面の笑顔で手を振った後、
スキップしながら元来た道を帰って行く。
長身の男のスキップ姿を初めて見た。
道行く人達がその様子を変顔で見ている。
今日の私の1日は敗北感満載。
溜息をついて、
過度の脱力感を背負いながら、
そしていつもの場所を目指して歩きだす。
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