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鍵穴に鍵を差し込み、
カチャリ、とドアを開ける。
玄関に靴がある。
ということは主は在宅。
トコトコと廊下を歩いて行き、
迷うことなくリビングの扉を開ける。
「あれ?」
だがそこに求める人物の姿はない。
部屋を出て今度は寝室の扉を開ける。
と、
まだ明るい午後2時だというのに、
カーテンは閉じられ、
暗い部屋の中、
大きなダブルベッドの上でその人は寝ていた。
布団から覗く上半身は、裸。
下半身も裸なのだろうか?
なんだかエロイ。
何度も見ているよく知るその体は、
逞しい筋肉のついた大きな体。
この男の寝方は、うつ伏せ。
いつも思うがこれは好きじゃない。
秀麗なその顔が隠れて見えない。
そばに行き、
しゃがんで同じ目線に合わせて、
とりあえず話しかけてみる。
「尚人・・・な、お、と」
「・・・」
「尚人君おはよ、なんで昼間から寝てるの?」
「・・・仕事で徹夜明けだからだ。なぜおまえがいる」
「加瀬君と別れたのでご報告に」
「・・・そうか。わかった。聞いた。帰れ」
眠そうな声で、
4つの単語を放るように言った後、
わずかに開いた目はすぐに閉じられ、
顔の向きを反対側に向けられた。
「ねぇ、尚人」
「・・・」
「尚人部長」
「・・・」
「佐久間クン」
「・・・」
無反応。
これは今までにない初めてのパターン。
フローリングの床にペタンと座り、
ベッドに顔を乗せて、
話がしたくてコトバ遊びをしてみる。
「ねぇ。わたし、勝負下着きてきた」
「・・・おまえと勝負する気はない」
「尚人とセックスしたいな、と思っているのですが」
「・・・セルフでしてくれ」
眠そうな声で寄越される手痛い返答。
が、耳はちゃんと聞いていてくれてるらしい。
そんな些細なことに安心している自分。
反対側を向いたままの姿勢でカレが言う。
「・・・ずっと聞きたいと思っていたことがあるんだが」
「なに?」
「俺はお前にマンションの部屋の鍵を渡した記憶はないのだが、なぜ鍵を持っているんだ?」
「テーブルの上に鍵が置いてあって、それをもらったから」
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