第3話

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 鍵穴に鍵を差し込み、  カチャリ、とドアを開ける。  玄関に靴がある。  ということは主は在宅。  トコトコと廊下を歩いて行き、  迷うことなくリビングの扉を開ける。 「あれ?」  だがそこに求める人物の姿はない。  部屋を出て今度は寝室の扉を開ける。  と、  まだ明るい午後2時だというのに、  カーテンは閉じられ、  暗い部屋の中、  大きなダブルベッドの上でその人は寝ていた。  布団から覗く上半身は、裸。  下半身も裸なのだろうか?  なんだかエロイ。  何度も見ているよく知るその体は、  逞しい筋肉のついた大きな体。  この男の寝方は、うつ伏せ。  いつも思うがこれは好きじゃない。  秀麗なその顔が隠れて見えない。  そばに行き、  しゃがんで同じ目線に合わせて、  とりあえず話しかけてみる。 「尚人・・・な、お、と」 「・・・」 「尚人君おはよ、なんで昼間から寝てるの?」 「・・・仕事で徹夜明けだからだ。なぜおまえがいる」 「加瀬君と別れたのでご報告に」 「・・・そうか。わかった。聞いた。帰れ」  眠そうな声で、  4つの単語を放るように言った後、  わずかに開いた目はすぐに閉じられ、  顔の向きを反対側に向けられた。 「ねぇ、尚人」 「・・・」 「尚人部長」 「・・・」 「佐久間クン」 「・・・」  無反応。  これは今までにない初めてのパターン。  フローリングの床にペタンと座り、  ベッドに顔を乗せて、  話がしたくてコトバ遊びをしてみる。 「ねぇ。わたし、勝負下着きてきた」 「・・・おまえと勝負する気はない」 「尚人とセックスしたいな、と思っているのですが」 「・・・セルフでしてくれ」  眠そうな声で寄越される手痛い返答。  が、耳はちゃんと聞いていてくれてるらしい。  そんな些細なことに安心している自分。  反対側を向いたままの姿勢でカレが言う。 「・・・ずっと聞きたいと思っていたことがあるんだが」 「なに?」 「俺はお前にマンションの部屋の鍵を渡した記憶はないのだが、なぜ鍵を持っているんだ?」 「テーブルの上に鍵が置いてあって、それをもらったから」
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