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「えぇ!!」
ユリエは助手席に乗り込むと、ドアを閉めた。
「ダ、ダミーって」
「あそこに住んでいる、と思わせるだけだ。君がこれから暮らす本当の部屋は、違うところにある。これから向かう」
ジンは続けて「君もシートベルトをするように。パトカーに捕まるとややこしいことになる」と話しながら、暖房のスイッチを入れると、アクセルを踏んだ。
すでに沢山の車が走って雪が凹んだアスファルトの上を、ふたりを乗せた車のタイヤが重なる。
ユリエは助手席の座席シートにからだを預けて、上目遣いでジンの横顔を見つめていた。
暗闇のなか、ときおり街灯がジンの横顔を照らす。
鼻が高くて長いまつげ、硬く閉じた唇が男らしい。
ユリエは、ジンの横顔を見ながらも、またしても奇妙な感情に包まれていた。
自分でも本当に奇妙だと思う。
もう、このまま私をどこへでも、連れ去って欲しいの・・・
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